「共」に「生」きる。 in 阿蘇

『塔』・その3

                夏  甘夏は、強く差し込む日射しの中で光沢を持ち始め、その器の中に確実に酸味と甘味を薄い袋を通して蓄えようとしているようだった。少し厚ぼったい葉が、果実を支えるようにして姿を見せ、幹から枝 […]

『塔』・その4

               秋  私たちの二回目の特集も好評の中に終わり、三回目の取材のときがやって来た。  梨は、台風の被害を直撃しており、出荷前の一番実り多いときに哀れなほど大きな粒の実が枝から振るい落とされ、地面 […]

『塔』・その5

              木村の手記  独房は、少しずつ監督の目が揺るやかになってきていた。戦況が、今、どう変わってきているのか、ここに連れてこられてから、判断ができにくくなっているが、そのような僅かの変化でどうにか見 […]

『塔』・その6

              冬  とうとう、この特集の最後の取材のときがきた。私たちは、天候の良い日を見計らってセスナ機を飛ばした。と言うのも、最初計画していた日に限って、まるでそれを予め知っていたかのように、珍しく雪が […]

『白ねこと少女』・その1

          白ねこと少女        1 やねがわらの上の白いねこ  絵里は、小学五年生になる女の子です。アパートの二階に住んでいます。まわりには、まだ少したんぼや畑もありますが、少しずつならされ、宅地がふえて […]