「共」に「生」きる。 in 阿蘇

TSMCの熊本進出にあたっての台湾メディアからの取材と番組内容

〇以下が今回の台湾のメディア取材に関して事前に受け取った質問に対し、用意し、まとめておいた私のおおまかな考えです。
実際は英語での案内を介しての進行で、スマホ片手に次々と話していかなければならず、うまく伝わったかどうかわかりませんが、動画ではほとんど編集でカットされておりますので、文面を通じて補っていただければありがたい限りです。また、ご尽力下さったふるまいさん、ディレクターのレイモンドさん、志賀さんに心より感謝申し上げます。

① 簡単な自己紹介
熊本県と福岡県の県境の荒尾市というところに生まれました。荒尾市は大牟田市とともにかつて戦前から戦後二十年くらいまで石炭の炭鉱で栄えました。北九州市立大学というところにいきまして、今回この取材の件を紹介して下さったふるまいよしこさんらと知り合い、大学の学生よる自治会活動、また『障害児の遊びを考える会』という地元の社会人や学生、社協職員も加わったボランテイア団体に入り、障害児者との福祉活動もやってました。卒業後は小学校教員になりましたが、発達障害の青年と出会ったことをきっかけに、彼の卒業後の自立の場所づくりをやろうと、30年前に阿蘇市では初めての民間の福祉作業所「夢屋」をつくり、今に至ってます。

② TSMCが熊本に工場を設立することについてどう思いますか。
賛成でも反対でもなく、世界が資本主義社会を基盤として成り立ち、機能している以上、優れた企業が、より多くの商品の剰余価値を得るために、そのために必要な有用な労働力と立地条件も含めた環境をもとめて進出していくことはごく普通に日常で行われてきていることだと思います。かつて日本も(ある意味、現在もですが)自動車産業や家電製品など、またユニクロなどの衣料品は海外へ進出していますので、今回はその逆が行われていると思っています。ただ、常に頭に置いておくべきことはかなりの大規模なものであることと、第一次的利潤を得るのはあくまでもTSMC本社であるということです。(1兆円の半分4760憶補助。第二工場1兆9600億の7500億は日本からの補助)

③ 日本のメディアや社会の一般的反応はどうですか
熊本の場合、地元であると言う点は大きいかと思いますが、県内で広いシェアの熊本日日新聞社はTSMC進出に対して特集を組み、その大いなる経済効果への期待と同時に今後の課題両面を提出しています。それはおそらく「水俣病」の教訓が生かされているかと思います。企業城下町としてチッソ熊本工場の力は経済界にとって収益と雇用の面で大きかったわけですが、反面、有機水銀(メチル水銀化合物)の廃液を無処理で流した結果、水俣病という公害による宿痾を生んでしまいました。もちろんTSMCがそのような理不尽な企業体であるとはまったく思いませんが、地下水への影響(とくに熊本のこれまでの売りは生活水が阿蘇山麓をはじめとする豊かな森林地帯から育まれる地下水で100%まかなっている)から生まれ出るが今後どうなるかはしっかりモニタリングしていく必要があろうかとは思いますし、そのことも報道はされています。

④ 日常生活や仕事において、何らかの影響を受けたことはありますか。
荒尾市生まれはすでにご紹介しましたが、94歳の父の介護と見守りをしています。母は2022年12月に亡くなりましたが、日常的な介護はヘルパーさんにお願いし、緊急の時はすぐにかけつけねばならず、すでにTSMCの第一工場の建設のピークでしたので交通渋滞は頭を悩ましました。これは日常の通勤通学の方々はなおさらだと思います。またさっき申し上げた地下水の影響、そして農地減少は既に始まっています。TSMC進出により地下価格が高騰し、不動産関係の売買がすすんでいっている記事ものっていましたし、実際に、あのあたりを通ると、かつてのどかだった田園地帯が、どんどん工場地帯へと変貌して行っている気がします。(2027年には第二工場もできるそうですし)、これから一つ一つ課題も出てくるでしょうから、それらと真摯に向き合い誠実に対処していくことが大事でしょう。とくに阿蘇地区はジオパークとしてもそうですが、増加する労働者の豊かな生活を支える「住環境」の部分で、地価が相対的に低くなっている点を逆手に今後大きな役割を果たし、人口減少をゆるやかでもいいのでプラス方向へ持ってていってほしいと願っています。

⑤ 台湾に旅行したことはありますか。台湾の印象は?
まず印象を申し上げる前に、1895年から1945年まで日本の統治時代、多大な犠牲を当時の台湾の国民の皆様に強いたことを日本人の一人として心よりお詫びしたいと思います。我们对不起!(ここは中国語で申し上げました) 本当に申し訳ありませんでした。
私は旅行に行ったことがないので情報で得た概念的なことになるかもしれませんが、印象深いのはLGBTQ+の性的マイノリティーに関して、『同性婚を東アジアで初めて認めたこと』、現在1万組以上のカップルが誕生していると聞きます。その道のりも決して平坦でなく世代や性を超えた地道な会話で理解を深めあっていったと聞きます。また対中国(中華人民共和国)においても(蒋介石の国民政府と毛沢東の共産党時代から)シビアに向合いながらも今回のTSMCに象徴されるように、半導体13兆規模の生産(世界の65%)を成し遂げ、「台湾人」として自国のアイデンティティーを外からの押し付けでなく、個々の内発的な部分から育てていかれていることに深く敬意を持つ次第です。(夢屋代表 宮本誠一)

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