ホイッスルが鳴った。孝たちの眼前で行われていた一回戦の試合が今終了し、二回戦の対戦相手はK小と決まった。
試合の行われていない体育館の向こう側で、青野が皆を呼び寄せている。空いているコートを利用して少しでも躯をほぐしておこうということらしい。
「さあ、行こう」珍しく孝が延也を急き立てるように声を出した。周りに座っていた者も連られるように立ち上がる。
他の場所に散らばっていた子たちもやって来て、全員が揃うと、さっそく延也を先頭に軽いランニングは始められた。体育館の横の端を何度か皆で往復する。青野も一番後ろをのんびりと付いて来ている。
こちらが休んでいたぶん相手には不利かも知れないし、たった今まで躯を動かし駆け回り汗を流していたぶん向こうには勢いがうまく味方しているかも知れない。とにかく、数分か後には、試合は開始されているのだ。
延也たちの二回戦が始まった。
(この作品は、1994年、詩と真実4月号に掲載されました。)