「共」に「生」きる。 in 阿蘇

2019『夢屋だより』(夏号.116号.7/17発行)からの文章です。

「令和」最初の夏、夢屋より、暑中お見舞いを申し上げます。
                    作業所「夢屋」代表 宮本 誠一
今、こうしてお便りの原稿を書いている(7/3)ときも、ラジオのお昼のニュースから豪雨への細心の注意を促すアナウンスが流れています。おそらくこの号が出ますのは二週間後位かと思われますが、どうか災害がなく、皆様の生活に大きな影響が出ないことを祈るばかりです。
さて早いもので本格的な夏の到来の時期となりましたが皆様お変わりありませんでしょうか。夢屋では例年通りz7/24に阿蘇市教職員人権・同和教育課題別研「共生」の教育にメンバー、スタッフが講師としてお招きを受けました。今年は元号が変わり、「夢屋の歴史とともに平成(の主に福祉)を振り返る」という内容で話させて頂こうと思っています。また26日にはスタッフの竹原も「生活つづり方」をテーマにお呼び頂いています。本当に有難いことだと思います。
思い起こすに夢屋が一人の発達障がいの青年の自宅を手作業で改装し、当時阿蘇郡で初の作業所づくりを始めたのが平成7(1995)年のことです。厳しい運営状況の中、当初行政からの補助はなく、パンづくりもまだまだの頃、メンバーと宅急便のアルバイトをしたことがありました。その折り配達先の場所がわからないとき協力して下さる方や、現在もそうですがメンバーがパンを配達に行った際楽しく歓談しリラックスさせ、労働の定着へ導いて下さったり、蔵原に引っ越す際も「おいしいから買い続けるよ」と笑顔で答えて下さった方など多くの地域の皆様のお力でこれまでやってこれました。本当に感謝の言葉しかありません。改めまして心よりお礼申し上げたいと思います。では6月~7月の行事(予定を含む)をご紹介させて頂きます。
6/17~21 小国支援学校からの現場実習(1名)
6/15森の家『野菜ty(のなてぃー)』のご利用。「くまにじ」様。
7/20~21 宮本が部落解放文学賞(小説部門入選)の表彰式のため大阪へ。
7/22 阿蘇市地域福祉活動計画第1回策定委員会に宮本出席(阿蘇市保健センターにて)
7/24学校人権・同和教育課題別研「共生」の教育、7/26「生活つづり方」へ講師として参加。
7/29 森の家『野菜ty(のなてぃー)』のご利用。ベトナムから。7/31は長崎から。
3年前の2016年はもちろん熊本地震が起きた年としてこれからも長く記憶に残っていくことでしょうが、もう一つ重大な事件が起きています。7月26日の相模原障害者施設殺傷事件です。神奈川県立の知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」に元施設職員が侵入し、入所者19人を刺殺、入所者・職員計26人に重軽傷を負わせたこの事件は、今ある多くの問題を突きつけており、ここで詳細を書くスペースはありませんが、その中の一つとして報道面で被害者が障がい者という理由で「匿名」にされたことが上げられます。最近ではハンセン病家族訴訟でやはり原告の多くの方が、差別や偏見を恐れ実名を出さなかったことと重なります。そのようなときよく、プライバイシーの侵害を避けるためなどの理由が上げられますが、まずは差別や偏見をなくすことこそ先決であるのは言うまでもありません。「匿名」により一人一人の存在の重さが消え、その風化を早めないためにも私たちは日頃から想像力を持ち続ける必要があるでしょうし、堂々と自らの出自や病名、障害を名乗っても何ら不合理な差別がない社会をつくっていくことが重要かと思います。その自戒と誓いも込め、心より哀悼の意を表したいと思います。

~皆の日誌から~博康さん、5日間、お疲れさまでした。
6月18日(火)~中島 地利世より~
今日は久しぶりにヒロヤス君に会えて、実習で会うたびに大人の顔になっているなあと思ました。夢屋に着いてすぐに日誌を持ってきて、これまでの活動の様子を楽しそうに話してくれるところはこれまでと変わっていなくてホッとしました。
 私が今日、ヒロヤス君を見ていてとくに感じたことはハサミの使い方がとても丁寧だなあと思いました。少しでも線からずれるとゆっくり綺麗に切ってくれて、すごく貼りやすいので助かりました。後は食パンの持ち方もとても丁寧に持ってくれるようになりました。
明日も今日以上にお話ししたり、たくさん一緒に楽しく活動出来たらと思います。よろしくお願いします。
6月19日(水)~池邉 美早より~
まず、博康くんと一緒に封筒に宛名をのりづけしました。のりのつけ方がたりないいと貼れなくなります。だからしっかりのりづけをしました。途中、天板洗いと粉入れをしました。立って入れるとこぼれるおそれがあるので、座って入れました。終わった後、博康くんたちと一緒に今度は夢屋の住所の紙ののりづけをしました。封筒の上でのりをつけるととれなくなるので、紙をしいてその上でのりづけをしました。今日の昼食はそうめんとみそ汁と4卵焼きでした。うまかったです。午後、皆でジャガイモとニンニクを掘りましました。説明せずに掘ると失敗します。だから宮本さんの話を聞いて掘りました。その後、アイスを食べました。うまかったです。
6月21(金)~山内 裕子より~
いよいよ笹木君にとっての実習最終日。そろそろ疲れも見えてきているんじゃないかと心配したけど、とても元気そうだったので安心しました。パン作りを始める前に笹木君の似顔絵を描きました。その後、パン作りに移り、私はケースのショートニング塗りを担当しました。一方笹木君は、粉計りやケース塗りを前回よりもスムーズに作業をこなしていました。そして今日もまた、とてもごきげんで実習がたなしいのかなと私は思いました。
 パン生地の形成ではチトセさんの少し厳しめの指導でも、笹木君は丁寧に作業をしていました。菓子パン生地の生成も笹木君は大活躍しました。今まだよりもとても正しい丸め方をしていて、その上綺麗な形でした。休憩時間は笹木君が楽しそうに塗り絵をしていました。その後、パン作り作業の後片付けに皆で取りかかりました。私は笹木君に使った道具をどこに片付ければいいか教えました。私は笹木君がてきぱき行動していてたので、何かこの五日間で成長したなと思いました。笹木君、実習、お疲れさまでした。

『コウキ&マイ日記5月~6月編』☆チー☆
5月1日(水)
今日は、残念ながらマイちゃんはお休みでしたが、その分、コウキ君が元気に盛り上げてくれていました。そこへ、小さなメンバーが参加してくれました。ナコさんのお孫さんで、皆の大人気者、キホちゃんです。コウキ君のそばにも来てくれて、お互い慣れない相手に、見つめあって興味津々…キホちゃんの方から、コウキ君の手をポンポンと触れると、コウキ君も「フフフフッ」と嬉しそうに笑ったので、それを見たキホちゃんも「ニッシッシ!」と、お茶目にふざけて満面の笑顔♪おかげで、ますます上機嫌になるコウキ君でした。☆
6月5日(水)
今日は、コウキ君もマイちゃんも元気に来てくれて、賑やかな【夢屋】になりました。先週、マイちゃんのお誕生日だったので、みんなでお祝いメッセージを作りました。「マイちゃん、本当にスッカリお姉さんになったね~」と褒められると、上機嫌になって塗り絵の仕事にヤル気が出てきたり、コウキ君にも気前よくハンカチを貸したりして遊んであげていました。(笑)
6月12日(水)
今日もマイちゃんが来てくれて、皆が揃った夢屋に一安心♪マイちゃんの爪が少々 伸びていたので、チーさんが切ってあげることに。♪途中、マイちゃんなりのお礼なのか?、スッとチーさんの頭に手を乗せて「ねっ♪…ねっ♪」と言いながら、笑顔で頭を縦に振ってくれていました。
6月19日(水)
今週は小国からの実習生ヒロくんが来てくれ、年齢が近い男の子がいるだけでコウキ君も大喜び♪ ヒロ君も気さくに「コウキ君♪」に話しかけ、ソファーに一緒に座るとコウキ君が全体重で寄りかかり「おいおい…重~い!」とじゃれ合い、2人で凄く楽しそうに過ごしていました。

大きな存在のコウキさん             中島 地利世
私がコウキさんと出会ったのは、彼が中学生の時、一の宮中学校から職場体験で【旧夢屋】にもう一人、同級生のとても活発な男の子と2人で来てくれた時でした。
事前の紹介で、宮本さんから「声はだせるけど言葉を話すのが難しい」と聞いたとき、声はでるけどしゃべれないって、どんな子だろうと疑問に思い、 ほんのちょっと不安な気持ちでした。実際に初めて見るコウキさんの印象は、小柄で、まだ小学生のように可愛らしい男の子でした。そんなコウキさんがウーウーとか声をだしたとき、宮本さんが言っていたことはなるほどこんなことだったのかと思いました。それからは納得し、いっしょにやれました。
やがてコウキさんが中学卒業と同時に、【夢屋】に入所して来てくれる事になりました。
スピード感のあるノリの良い音楽が好きらしく、とくにジブリの「となりのトトロ」が流れ出すと、すごいジャンプ力で飛びあがるほど身体を揺らす運動も見せてくれたりします。そのときはウォーウォーと元気のいい声を上げ、ニコニコ顔です。私がテーブルで作業している時などは、「ちょっと疲れたな~」と、少し休憩すると、決まってタイミング良く後ろから肩や腕をポンポンと叩いてくれる時もあって、「気遣いができるように、大人になってきてるんだなぁ」と、とても癒されることもよくあります。
また、コウキさんはふだん紙パンツを使用しているのですが、便がたまっているときとかはおならの匂いもなんとなく強くて、何回かズボンのお尻の方から覗いて、大丈夫かどうか見ることもあります。またもしやってしまったときも、みんなで協力してお世話をするのですが、私がしていることは、宮本さんがコウキさんをシャワー室で綺麗にしている間にまず着替えの服を準備しておき、部屋にもどってきたらすぐに着せてあげることです。コウキさんだけじゃなくて、マイさんという他のメンバーの子のトイレも、お通じが悪かったらお腹をマッサージして、刺激してあげたりもしています。家族以外のトイレのお世話を手伝うという、なかなかできない体験を勉強させて貰ってきたのは、やがて母の介護が必要になった今、とてもありがたい事だったんだと思いました。
とにかくコウキさんの存在感は大きくて、休んで、そこにいない時も、いつもソファーにいるような感覚になります。「今日の彼は静かだな~」とふと、作業の手を止めて、隣の部屋を見ると、「あ、今日はいないんだった…」と、いう事がよくあります。
いつもコウキさんのためにやっている習慣になっていること(お昼ごはん前に薬の準備したりなど…)ができないと、例えば家でハミガキしたり、お風呂に入ったりという当たり前にやっていることをしていないようで、なんか落ち着かないです。
最初は、可愛い弟のように思っていましたが、今では自分も年齢を重ねて、だんだん、息子のような感覚になってきました。
なので「もし自分に子供がいるとこんな感じなのかな~」と、学校付近などで歩いている子供達を見ると可愛く思うようになって、微笑ましい気持ちでついつい顔がゆるみます。子どもからみたらそんな一人で笑っている自分が「ちょっと怖い人…」と思われているかもしれないので気をつけています(笑)。

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