「共」に「生」きる。 in 阿蘇

第二章・三、『こだわり』という名の氾濫

 

内装工事もかなりすすんできた年の瀬の迫った十二月、担任していた児童の保護者の紹介で宅配便のアルバイトを始めた。
宅配便の最後の日のことだ。前日、私はトオルからテレビ局へまた手紙を送ってほしいことを頼まれ、その文面を家で書いてくることをうっかりわすれていた。
「ミヤモトさん、どうして忘れたつ?」
「そりゃあオレだって疲れて寝てしまうことだってあるくさ」
 私はもう少し丁寧に答えなければと思いながらも、どちらかというと邪険に言い放った。午前中は、私はトオルの相手をせず、宅配便をくばることに専念した。午後のことだ。いよいよ小荷物は、残すところ一つになった。さっそくトオルがまた聞いてきた。
「ミヤモトさん、どうして手紙わすれたの」
 少し山間にある、ペンションへの配送途中だった。
「だけん言うたろう。疲れて寝たって。べつにわざと忘れたわけじゃなかて」
 トオルはしばらく黙っていた。私も喋らなかった。わずかだが車の通りの少なくなった道路へさしかかった瞬間だった。私がカセットでも聞こうかとスイッチを入れるためトオルの側へ手をのばしたときだ~。
  

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