「共」に「生」きる。 in 阿蘇

第三章・『夢屋』での障害者たちとの出会いと別れ           一、集い始めた仲間たち

 

トオルが一時的に三気の里にあずけられてから、夢屋はしばらく灯の消えたような状態だった。それでもトオル以外のメンバーもさっそく現れた。
 ミチコさんだ。夢屋がオープンする三年ほど前、彼女は、娘さんが就職のため親元を離れた後、突然虚脱感を覚え、不眠症に悩まされだした。周囲のアドバイスから、更年期障害だと思い込み、いくつかの病院をはしごする形で検診するが良い結果は得られなかった。一つの病院で、睡眠薬をもらいしばらくは眠れる。だが、一ケ月もするとまた効かなくなる。と、次の病院へ。人から良いと言われる病院へ行き、そして、又、効かなくなる、そんなことを繰り返していた。
「眠れない」「やる気がおきない」「何もしたくない」状態は、やがて「死にたい」という局限の心理状態になっていく。ついに精神科の受診を考え出したとき、彼女に引っかかっていたものは、やはり結婚適齢期の娘さんのことだった。
「もし、母親が精神の病だとし、それが娘の将来に影響を与えないだろうか」
 ミチコさんは、意を決して娘さんに相談する。
 返事は意外なものだった~。
    

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