「共」に「生」きる。 in 阿蘇

游人たちの歌・第三章・二、施設、家庭、それから夢屋。

 ノリオさん、レイナさんが常時メンバーとして加わり、ケンジさんもときおり顔を見せだした十一月、ついにトオルは一時帰宅を果たした。金曜に三気の里へ私が迎えに行き、車で夢屋に向かう。一泊後、土曜にマサミが家から送っていくという形だ。園へ帰る日は、計画では、一月ごと一日延ばし、土曜から日曜、最終的には月曜にするというトオルとの約束だった。
 一日一日、トオルの生活を見てみなければ、私たちも対応の形がまだハッキリとつかめない。帰宅した夜は、もちろん夢屋の二階の自宅で過ごすため、マサミ以外の家族との協力も必要だった。猛には、父親、それに四つ違いの弟がおり、いざパニックになった場合、二人に見てもらうケースは、当然増えてくる。
 昼間は、トオルを落ち着かせるため、できるだけ夢屋のメンバー全員でいっしょに過ごそうというのが、まず生活へ溶け込む第一歩だ。
 もっていく洗濯物やズボン、下着などをバッグにつめながら、私は、ようやくこの日が来たことに抑えようのない喜びを感じていた。
 三気の里を出る時、職員たちも笑顔で見送ってくれた。
「トオルくん、ゆっくり楽しんでこんね」
「ハイ」
 トオルは素っ気なく返事をし、バッグを片手に私の車へ向かう。半年前、すべての希望の灯が打ち消えたように施設へ再入所し、今、再びトオルの願いを実現するため、地域での生活の第一歩が始められようとしている。私の胸も当然のように高鳴っていた~。

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