装丁は、熊本市在住のイラストレイター、青柳綾さんです。
独立行政福祉法人福祉医療機構の2006年度の高齢者・障害者福祉基金助成により、出版することができました。
小規模作業所の活動をより知ってもらうことや、障害者と健常者のかかわりを考えるきっかけになればという目的で熊本県社会福祉協議会の推挙により企画が採用され、上梓がかないました。
掲載内容は以下のとおりです。
『トライトーン』
エバタとモンは同じ通所授産施設へ通っている。
仕事の合間に、コンビニなどの駐車場を見張っては、障害者用駐車場にとめた相手につめより、うさを晴らす毎日。
そんなとき、いつものように駐車した証拠をつきつけ迫った相手が、今度は逆に、ひそかにエバタにつきまとい始める。
『真夜中の列車』
小学校教師を退職して自閉症の青年と作業所を始めた木村はすでに別の作業所を軌道にのせている坂田に顧問を頼む。
坂田と付き合う夕子、その坂田を慕う京子らの存在をからめ、障害者と健常者の関係を日常のさりげない情景を切り取りながら描いた作品。
『水色の川』
更生施設に入ることになった孔は、敏感すぎる神経と、こだわる資質により、職員と次々と衝突をおこす。
だが、そこにむしろ自由を希求してやまない人間の本質を見た担当の満子は、パニックの後孔の漏らすなぞの言葉「ミズイロノカワ」をいっしょに探しに出かけることになる。
後者二作品は、いずれも部落解放文学賞の小説部門で入選したものです。
また、帯文には作家の立松和平氏から、次のようなすばらしい言葉をいただきました。
柔らかく壊れやすい魂と肉体を持った人間が、
同じ人間を介護することは可能か。
極限の人間関係を描き切った小説集である。
福祉活動の一環としての書物なので、あくまでも非売品です。
店頭などにはおかれていません。
興味のあられる方、ぜひ読んで見たい方は、『夢屋』までご連絡ください。
また、読まれた方は、このブログ(カテゴリー)のコメント欄へどしどし感想をお送りください。
こんにちは、トライトーン読みました。
最初の作品が面白かったです。人が正義と思ってやっていることは実は彼らのような行為が多いのかもしれませんね。”正義”を振りかざすという点では強者も弱者もかわりがない。
その動機は案外嫉妬だったり鬱憤だったりすることもあるわけで他者を弾劾する前に己を振り返ってみるのも必要なことかと思いました。
マザー・テレサがかって、「戦争反対のデモに参加しませんか」と言われて断り、「でも平和のためのデモなら参加してもよい」とこたえたという話を思い出しました。
彼女には戦争反対を掲げる人と戦争の大義を掲げる人は同じに見えたようです。
コメント by アマサ — 2006年11月3日 @ 1:41 PM
11/2にトライトーンと出会った者です。
トライトーン、読みました。
「がんばれ」という言葉、普段の障害児とのかかわりの中でよく使ってしまっている言葉だったな、とか、もし自分が木村だったら、殴りかかったトオルに何と言い、車に乗せただろうか、とか、孔のつばはきに対して自分はどんな対応をするだろうかなど、日々のかかわりを振り返り、考えさせられました。
また、「あとがき」を読んで感じたことですが、普段私は、きっとできると信じる思い、そして、実際に相手ができた時、その時こそ、お互いに喜びを共有しあい、よりよい関係が築かれる瞬間ではないかと思っています。しかし、「信じる思い」のみでは、相手は負担?になることもあるでしょうし、もしくは相手が「できた喜び」を感じていても、一方では「当たり前?」程度しか感じられていない時には、何も生まれてこないのではないでしょうか。(しかし、私の場合、実際の日常生活の中で、このような場面がきっとたくさん起きていることでしょうが)片方だけでは成り立たない、だから「コミュニケーション」なのかな、と思いました。そして、言葉では簡単に言い表せても、実際は奥が深い、「偉大」なものだなと感じました。
ぜひ、職場でも「トライトーン」を紹介したいと思いました。
コメント by おおづよ — 2006年11月11日 @ 12:17 AM