近くに小川でもあるの
だってほら聞こえるよ
水車の音それとも
櫓をこぐ音が
あれは
栗毛の五歳馬が前足で水を蹴って
跳ねのけてるのさ
遊んでるの
違う
みてごらん
向こうに黒毛牛十三頭
牧野に草はない
ただの汚泥のかたまりに
肘頭までめりこませ
横えたからだは
まるで干乾びた鱗そっくりで
どこが胴で脚か
見分けがつかないだろう
それでもどうにか
杭のようにぬきとり
胸垂には糞便のつららが
へばりついてるんだ
ほらあそこのはずれが栗毛さ
押し寄せる汚泥を避け
汚水を外へ外へ蹴散らしてるんだよ
もともと米をつくってたんだけど
政策がかわってね
牛を飼い始めたら
また政策がかわり
予定の補助がこなくなり
やめるにやめれず
排水路や砂もしかず
飼い始めたのさ
どうしてちゃんとしないの
区長も言ったけど聞かないんだ
業者が忙しいとか
理由をつけては
のらりくらり
バッジをつけた人なのに
栗毛にはね
お腹に赤ちゃんがいるんだよ
だからね 水はけがわるいと
ああやって汚臭やハエや雑菌や
アオミドロをできるだけ
自分から遠ざけてる
赤ちゃん大丈夫かな
蹴る回数は
増えるばかりさ
ほらごらん
お腹を瘴気へ突き出して
蹄を天にゆらしてるよ