むらさだめ          宮本誠一

 

墓石のように

首晒し水求め

息絶ゆ

 

結界踏み越え

契りし女のもとへ

 

山肌は噴煙に染まり

汚辱のように

流れゆく

燃え滾る

 

またたくま

広がる

疱瘡

 

結わった縄

振り下ろされ

刃先丸太食込みなば

桁橋こだまとも落つ

 

そうだ

谷向こうから来た者

それは我らである

 

岩屑の散乱、壊乱、撩乱

鬨を抉ったように

くすむ洞

うごめく

地蔵

 

足音はいつしかこと絶え

陽に一度の握り飯で長らえ

あとは

死待つのみ

 

結界つくり

破り去る者はだれか

 

土中に染む水滴

しめつける

地肌

 

泡立つ肌理に息のみ

くどの灰

撒かるる

日まで

じっと耐ゆ

 

天狗岳

遠く法螺の音

凍てつく

暁を