満ち去ってしまった浮篊の沖に
竹矢を突き立てねばならない
潮位は陥没に堪えうるだろうか
採炭は土砂の投げ入れに勝るだろうか
海面座す船底に照る蒼空の遥か彼方から
矢の何倍もの耳付けの格子じまがやがては
その何倍もの黒紫の藻を垂らし引上げられる
沖合の稚貝は身と殻をときに裏返し
あるものは潮汐を隠れ蓑に成長を遂げ
またあるものは砂浜へ打上げられ虚空を得
何層にも重ねられたコークスの上で
焚かれては白灰となる夢を描き
有明を渡り漆喰の架け橋となった
時を経、ともに作業所をつくったあいつの
手にも漆喰はわしづかみされ
わたしの頬をなでつけていた
息絶える直前、自傷の果ての口腔は昏く
やりきれぬ明日の陰りが映されるだけだった
いつからだろう
始まりも終わりもない
しがらみの潰えた円い砂浜の壁を
練上げた漆喰で幾度も塗替えることが
最も強固で困難なことと知ったのは
彼はそのたびに這いずってきては
緩んだわたしの頬と牆のような白き海馬に
悪戯っぽく鞭打っていく
遠く干潟に映りし記憶
打寄せられたものでは足りず
夕照の家々の蟹戯れる捨場で友の目を気にし
祖父のリヤカーを押す幼き母の残影
拾いあつめたウバ、赤、アサリの骸
髪は海苔、爪は貝、膚は蝦蛄に染まりつつ
白灰がやがて有明の地下茎に直に突刺さる
虹色に光るタイラギを迎えんと願ったように