スノウ            宮本誠一

机をどんとたたくうちに

掌は腫れてしまった

ピクリと動きを止めたり、早めたり

無駄なく機敏な者たちよ

調教されていたのを知っていたのか

 

あれは何気なく鍵をかけ、帰ろうとした深夜だった

低く唸る声が聞こえてきたのは

 

出所を知ろうと

あちこち首をまわすと、ある一点に止まった

一階へと真っすぐに落ちる排気口の底の底

 

恨みつらみを塗り込んだ亜鉛鉄板の光と闇

 

何と変節してしまったことか

すぐさま立ち去れ

できれば目の前から

 

死人のように薄く陰った幾十もの影の上に

雪が

そう、たしかに見えるか見えないかの結晶が

知らぬ間にふり積もっていたのだ

 

雪はすべてをおおい隠すと

あとは手慣れた大海原のクラーケンのように

一人一人の裸体を置き去りにしたまま

街の舗装版の隅々にまで触手をのばし

吹き溜まった埃といれかわるように

姿形を同化していった

 

罪よ

私の犯した罪よ

すぐさま立ち去れ