影踏み            貴田雄介

 

影は黒いと誰が決めたのか

黒を黒だと誰が決めたのか

若い時の苦労は買ってでもしろと

口喧しく

若者を指弾した老人の言う苦労とは

戦争のことか

そんな苦労なら死んでもごめんだ

売国奴と罵られ

非国民と住処を追われ

暗い独房の奥底へ落ちてゆく

刑務所は地獄だと誰が言ったのか

宇宙まで透き通る青い空の下で

自由な空気を吸って生きていくことが

本当の幸せなのか

刑務所の中で

埃を被った古の賢者達と対話することが

人生の幸せに繋がっているかもしれない

内と外は簡単に裏返るのだ

僕たちの身体の管を通過する空気は

外気と変わらないのだから

不意に出る屁がそのことを教えてくれる