「共」に「生」きる。 in 阿蘇

『缶詰屋』その四

 そんなかれが興味をひくものが、もうひとつあった。 営業で知りあった顧客の坂本という男のつとめる車椅子工場だ。そこに山田勇次という男もいた。  山田は佐伯と同じように高校を途中でやめていた。ただ佐伯が、大検でもう一度レー […]

『缶詰屋』その五

 ある水曜日のことだ。社長がめずらしくきげんがよく、「きょうは、はやくかえっていいぞ」と言ったらしい。ちょうどその日は、自分の息子の誕生日だったらしく、勇次たち三人は、残業日にあたっていたが、社長のその言葉をそのときは誠 […]

『缶詰屋』その六

 社長も、例のようにいつのまにか事務所に消え、佐伯が、いつものように工場をしばらく見学し、去ろうとしていたとき、一台のベンツが、横づけしてきた。滝川という、営業だけを専門にやっている男だ。かれは、後天的なハンディのもち主 […]

『缶詰屋』その七

   佐伯が初めて工場をたずね三年になる。  そのとき、坂本は、リムとハブのあいだにスポークをはめこむ仕事を、来る日も来る日もくりかえしていた。かれに車椅子づくりの工程をおしえたのが山田勇次で、その勇次に教えた男は、すで […]

『缶詰屋』その八

   一年ほど前、たまたま営業の一番目にこの工場へたちよったときだ。工場は、町の誘致した大手のコンピューター会社や半導体をつくる工場の隣接したとおりの一番おくで東がわを表にシャッターをかまえ、風のつよい日は換気をよくする […]