「共」に「生」きる。 in 阿蘇

『島』・その十六

  家は大きな柱を四つほど使い、その上に一本一本梁を組ませ屋根を敷いていた。母親らしい女が豆をブリコで叩き、殻をしきりに剥いでいた。ブリコは唸る音を立て、脇の下から耳元を掠め、きれいなひょうたん型を描きながら茣蓙を敷いた […]

『島』・その十七

               島  その夜、彼は宿に帰ってから寝つかれなかった。いよいよ明日、この島を立たなくてはならないのだ。しかし、その決心がまだつかないでいた。彼は、布団から跳ね起き窓の外を見た。頂度目の前のがらく […]

『島』・その十八

 タケダが立っていた。  タケダは彼に、問いかけるようにして話し出した。  「君は、やっぱり来たんだね」  その声はおそらく、さっきの島民たちと同じように彼以外には聞こえていないにちがいなかった。 彼も、「なあんだ、君た […]

『島』・その十九

 『島を焼く。がらくたに火をつけて』  彼も、それと同じことを、まだぼんやりしている意識の中で考えていた。  もし、今、この島が、タケダが言ったように生活から離れてしまったり、日常でない部分に入り込み、肉体にハンディを持 […]

『島』・その二十

 半鐘がようやく鳴り出していた。  だが、幸いにも強い風が火に味方した。風は、火を煽りながら、がらくたと炎とをこれ以上できないというほどに睦まじいものにさせていた。風に勢いをつけられた炎は、がらくたをのみ、がらくたは炎を […]