「共」に「生」きる。 in 阿蘇

『エデュケイショナル・スノウ』その一

          エデュケイショナル スノウ
        Educaitional  snow
           ~ある十二の報告集から~
           *           *
              プロローグ
 総司令官閣下殿、私たち一行が、この辺境の地へひそかに参りましてから既に数年が過ぎ、観察調査しましたことについてのご報告をいたづらに引き延ばしながら日一日と恐縮していたおり、このたび届きました閣下からの御催促の御言葉に私自身、覚醒の感がありまして、これまでの己の俊巡を今さらながら遺憾と思い直す次第、ようやくここにペンを執ることになった旨をまずもって、お伝えせねばなりません。と言いますのは、閣下が最もお知りになりたかったこの地域に於ける、今現在とられている教育の現状を考えましたとき、私たち外部の者から見た場合、どうしても推察しようにも出来ない、ある線上を越えた地点があり、それらがあたかも、この地域独特の干満の激しい潮の満ち引きとともに姿を現す幻の防波堤の如く我々の思考を悩ましつづけ、冷静な判断を極力しづらくしていたということがあったからです。我々は、我々に課せられたその職務と責任をけっして忘れたわけではなく、これら具現する視差をできるだけ最少限に押さえ、あるがままにそこから過剰なものを多く取り除き、客観的な根拠に近づけようと日夜努力を重ねて参ったのですが、なかなか各々の考えをうまくまとめることができず、遅らばせながら、今ここにこうしてお詫びを兼ねた微力な報告書の紙片をお渡しするに及んだ次第なのです。結果はどうであれ、既に開始された以上、この遅鈍なる文面が双方にとって、幸なる糧の第一報となればと願っております。
 さて、最も重要なことからお話いたしますに、開口こんなところから始めるのは不躾でありましょうか。閣下には、我が国で行われている初等教育の、ある一つの小学校の教室での授業風景の一場面を想い浮かべていただきたく思います。それには、これといった別段の教科の選定はしなくともよろしいかと思います。ただ、全体に共通する大まかなところだけは、しっかりと想像していただきたいのです。私が考えますに、その辺りにこそ我が国全体とこの辺境との最大なる相違が潜んでいると思われるからです

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