「共」に「生」きる。 in 阿蘇

『夢屋だより秋号』(116号・9/24発行)からの文章です。

 

 

 

 

 

 

 

 

夢屋から中秋のご挨拶をさせていただきます。
作業所「夢屋」代表 宮本 誠一

今年の夏は続けて台風が来たかと思うと、急に激しい日差しに覆われ湿度が上がり、地面が乾き切る間もなく長雨、やっと落ち着いたかと思えば今度は阿蘇山の火山灰(よな)の長期にわたっての降灰など、今も不安定な天候が続いている感じですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。夢屋は8月は15、16日をお盆休みとさせていただいた以外、通常通りの運営をし、メンバーたちもパンづくりや配達の最中、気温の激しい変化に体力を消耗する日も多かったです。それでも、そのたびに力づけて下さったのはお客様方の温かなお言葉です。「暑いけど大丈夫?」「水分はちゃんととらなんよ」と配達の先々で言葉をかけて下さり、たちまちメンバーたちにも笑顔が戻り、無事に過ごすことができました。改めまして感謝申し上げたいと思います。また阿蘇市学校人権・同和教育部会課題別研修会も50名近い参加の中、質疑も多く出て活況の中に終えることができました(その様子と先生方の感想の一部はP4からP8に掲載しています)。
さらにもう一つ大きな出来事がありました。小国支援学校の生徒さん2名が週一回、自主的に現場実習に来てくれたのです(感想はP3にあります)。これまでも学校の休み期間来られる人はいましたが、一度に二人は初めてで互いに教え合い楽しくでき、他のメンバーも刺激となり、素晴らしい体験となりました。最終日に活動の様子の写真とメンバーやスタッフからの一言ずつのメッセージを書き込んだ手作りの写真立てをプレゼントしました。改めて本人はもとより、夢屋をそのような場に選んで下さった保護者の方々へ感謝申し上げたいと思います。
それでは9月から11月までの行事(予定を含む)をご紹介したいと思います。
9/7 蔵原のお薬師講の〝よど〟祭りの行燈づくりに加わり、動画作成し、ネットで公開。
9/14 東京より理学療法士さんが森の家『野菜ty(のなてぃー)』をご利用(2名)
10/8阿蘇市読書感想文コンクール第2回審査委員会(宮本が審査委員長として出席)
11/3 お薬師講の〝よど〟祭りにメンバーがつくった「あんどん」も飾っていただく。
さて上記にもありますように、今年は蔵原地区のお薬師講の〝よど〟祭りで使うあんどんづくりにスタッフが参加させて頂きました。日頃パン販売などでお世話になっている阿蘇小の先生方もいらっしゃっていて、児童や保護者と一心に作業されていました。帰り際、「夢屋の皆でつくってはいよ」と区長の竹原忠信さんから骨組みを一つ頂戴しました。さっそく翌週、メンバーと一緒に和紙を貼り、絵や言葉を書いて完成させました。本当に有難うございました。
最後になりますが、9/7の熊日朝刊に国道57号線が来年度中に再開の見通しとなった記事が載っていました。豊肥線や北側復旧ルート(阿蘇市赤水―大津町引水)と国道325号阿蘇大橋も20年度中に開通予定となっており、いよいよ震災前の交通網が取り戻せるのかという感慨に耽けらざるをえません。日夜復旧に向け尽力されている全ての皆様に感謝の意を表したいと思います。また5年という年月を要し、ようやく示された道路、鉄道の見通しに、改めて被害がどれほど甚大であったかと沈思せずにはおれません。この場をかり再度、被災者の皆様へ心からのお悔やみとお見舞いを申し上げると同時に、阿蘇神社を始めとする様々な場所、そして全国の被災地の一日も早い復興を願いたいと思います。

学校人権・同和教育部会課題別研修会の感想です。参加された先生方の感想の一部を載せさせていただきます。本当に貴重なご意見やお言葉、ありがとうございました。
●下村さんの話で「周りの人の協力がないと」という言葉があった。私にできることって何だろう?と考えた。手を差し伸べられる社会にしたいと強く感じた。
●障がい者やそのご家族の生活の厳しさに直面し、支援していこうと思われた宮本さん自身の生き方、考え方を知ることができたと同時に、行動力のない自分の力のなさを感じました。
●私の兄は障がいを持っていますが、年齢を重ねるうちに障がいが重くなってきました。両親も高齢となり介助の難しさを感じている現状と今回のお話の一部分が重なり、私自身忙しさを理由に考えてこなかったことを考えていきたいと思いました。ありがとうございました。
●学校現場も〝生産性のみが求められる〟〝枠組みばかりに目が行く〟ことになっていないか考えさせられました。自分自身、つい「時間がない」「ゆとりがない」を理由にして本当に目を向けねばならないもの、向かわなければならないものから逃げてはいないかと反省しました。
●「居場所」とは何かということを考えさせられました。障がい者が安心してそのままの自分でいられる場所や存在こそ豊かな人生を送る上で重要なことであり、その場所が地域にあるということに大きな意味を感じました。当事者の言葉から夢屋さんの温かさが伝わってきました。。
●久しぶりに裕子さんの顔を見て、時間がたつのは早いなと感じました。支援学校を卒業した後、どうなったのか気にはなっていましたが、現在に至るまでのことを知ることができ、良かったなと思いました。インクルーシブ教育を実現するために努力していこうと思います。
●「行政の定めた規定にばかり合わせようとするのでなく、日々の活動を大事にしよう」「作業所の感覚を忘れず、今まで以上に家庭的な雰囲気でやっていけたら」に夢屋さんの〝心〟を感じました。メンバーの方が自分を表現して過ごしておられるのがまさにそうだと思いました。
●宮本さんを中心に他のメンバーやスタッフの方の声も織り交ぜながらの進行は初体験で、インパクトがありとてもわかりやすかったです。自分もぜひ機会があったらやってみたいです。
●生徒達の進路指導を振り返る機会になりました。「共生」の教育の充実には、高校においては生徒一人ひとりとの言葉のやりとりなど日頃のかかわりが大切であると強く感じました。
●下村さんの盲導犬のお話は知らないことも多くあり、機会が在ったらまた勉強したいです。
●アメリカ映画の現場ではアフリカ系アメリカ人、白人、黄色人種…と必ず出演させるよう決められているそうですが、日本の様々な職場でも一緒に働ける日が早くくればいいと思います。
●〝生産性〟だけがすべてでは決してないはずなのに資本主義社会では何かと〝生産性〟が求められ、それは教育の面でもあるように感じます。生徒一人一人の「居場所づくり」は私たちの使命だと思いますが中々難しいのも現状です。心のゆとりを持って共に生きたいと思います。
●「共に生きる」という根っこの部分は時代や法が変わっても夢屋の皆さんの思いは何も変わらず、共に仲良く、助け合って生きるという自然な姿なんだなあと感じました。
●障害を持つ方々が生産性を求められて職に就けなかったことや国の施策がまだまだ不十分であることを知りました。もっと日頃から福祉に目を向けて生活していきたいと感じました。
●目的地でも通過点でもいい。その時々の関わりを大事にし繋がっていく大切さを知りました。
●25年間という歩みの中で厳しいこともあったと思いますが、その中で歩みを止めることなく「共生」とはどういうことかということに向き合ってこられたんだなと強く感じました。
●私の所属する高校は生徒を社会に送り出す役割を担っていますが、私たち教員ももっと色々な側面を知り、生徒一人ひとりに合った環境を提供できる手伝いができればいいと思いました。
●宮本さんの言葉「生産性は下がるかもしれないが、彼らと仕事をすることで豊かな価値が生まれる」にとても共感し、「共生」とはそういうことだと改めて感じました。
●青年が施設から飛び降りた経緯を聞いた時、真っ先に思い浮かんだのが、以前勤めていた老人ホームのことでした。そこでも介護職が色々な事情で仕事を辞められ、職員の入れ替わりが激しく、入社して間もない職員が新入社員を教えると言う状態に陥っている時がありました。全ての福祉の面で、まだまだたくさん改善しなければならない面があると感じました。
●夢屋さんには以前担任した子どもが職場体験させて頂き、そのたびにテレビ電話で報告してくれます。今日メンバーの方のお話を聞いてやはり働きたくなる場所なんだなと思いました。
●子どもたちの今の居場所、卒業後の居場所、地域で暮らしていく上での仲間づくりはできているか、考えさせられました。小学校時代から将来を見据えた取り組みが必要と思いました。
●宮地小で下村さんから盲導犬を通してたくさんの学習をさせていただいたやんちゃな子どもたちも、今、一の宮小の6年生となり、しっかりと学校を引っ張ってくれています。
●今、目の前にしている子ども達が安心して自分を出せる場所や時間を共有できているかいつも考えていきたいです。これから先長い人生で見つけてほしいと願う気持ちが強くなりました。
●支援学級を担任し、進路や将来の就労への不安や相談を受けることがあります。子どもが自分のよさや自分らしさを発揮し、地域で生きていく方法を一緒に見つけていきたいです。
●法が様々な面で自分の生活に深く関わっていることをお話を聞きながら再認識しました。
●教員となりまだ一年がたったばかりで、生徒のことを知ろうとする態度や居場所をつくってあげることへの配慮がまだまだたりていないなと、振り返りながら考えていました。
●質疑応答のときメンバーの全員がパン作りが楽しいと答えられていました。その考えは私も同じです。近々人権子ども学習会で納涼会をしますが、その中で料理(作り)を予定しています。食べることよりも作ることの方が楽しみです。また夢屋に行かせて下さい。
●「平成」から「令和」となりましたが、今回の研修を受けて全然障害者に対する知識や社会の感覚が実際の当事者のニーズに追いついていなく、法律も不十分であることを知り驚きました。
●パン配達で学校に来る様子を見たり、『夢屋だより』を読ませて頂き知っているつもりでしたが、実際にお話を聞き、やはりそれは「つもり」だったと反省しています。共生社会の形成のためには相手のことを知り、自分のことを伝えることが必要不可欠であることを再認識しました。
●まとめにあった「法は言葉でしかない」という言葉にハッとさせられました。どういう根拠や狙いがあるのか、その法律でどういう思いをする人がいるのかも考えなければと思いました。
●日本の中の法制度も、一人ひとりに優しいものになるといいなと思い、授業においてもそんなことも含め考え、行動できるような生徒を育てていきたいと思いました。
●教室や学校に来れない生徒と関わっていますが、自分がどうあるべきか考えさせられました。

『温かい雰囲気だった課題別研修会』
中島 地利世
7月24日「人権・同和教育課題別研修会」に皆で参加しました。毎年のことながら、いつも緊張してしまう私は会場に着いてからも、心臓ドキドキ…足はビリビリ…手汗はベタベタです。何とか自分の席に座ると、いつもパンの配達に行った時、帰り際に「また、来て下さい」と笑顔で言って下さる先生がいらっしゃって、その先生が前の方で、いつものように優しい笑顔を向けて下さったのでホッと緊張をほぐすことができました。他にも、私が「夢屋」に入所した時からお世話になっている懐かしい先生や、日頃とても親切にして下さっている先生ばかりだったので、安心して楽しくお話することができました。初顔の先生方も、コウキ君がソファーのそばに落とした荷物を、わざわざ立ちあがって拾いに来て下さったり、会が終わってから、荷物が多い私に「これを使って」と袋を差し出して下さったり、ある先生はそばまで来て「すごく楽しそうなのが良かったです」と言って下さり、嬉しかったです。後日、届けて下さった先生方の感想文の中にも「パンを買いたい」と書いて下さっている先生や、配達中、偶然「夢屋」の車を見かけたとわざわざ車のところまで来て声をかけて下さった先生もいらっしゃり、終わった後まで、温かい雰囲気がつづいてくれた行事だなあと、これも日頃お世話になっている先生方やお客様、そして地域の皆さんのお陰だなあと感謝の気持ちでいっぱいになりました。

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