「共」に「生」きる。 in 阿蘇

4/27発行の『夢屋だより』から文章の一部をご紹介します。

皆様へ、新年度の春のご挨拶を申し上げます。  

夢屋代表 宮本 誠一
 あの熊本地震から1年が過ぎました。県内の各地で追悼式や慰霊式、復興を願う取り組みが行われ、新聞やテレビなどでもは多くの報道もされているようです。阿蘇市門前町商店街でも1100個の竹灯籠に光が灯されました。これまで、このお便りでもたびたび書いてきましたが、パンを買って下さっているお客様を始め、地域の皆様、行政や教育関係者お一人お一人にとってあの日からの一年は言葉では簡単に言い表せない厳しい状況の中でお互いに励まし合い、支え合い、手探りで一歩ずつ歩んでこられた日々ではなかったかとご推察申し上げます。本当に心より敬意を表するとともに、これからの道のりもまた、地域の福祉作業所として微力ながらご一緒にお供させていただければと願う次第です。
さてそんな中、夢屋では簡易宿泊所『野菜ty(になてぃー)』を運営させていただいておりますが、JDF(日本障害フォーラム)様や多くのボランティアの支援もあって、今年度も4月から御宿泊客を迎えることができました。北海道大学の学生のお客様で、4月11日に札幌の時計台で復興イベントとして行定勲監督の『うつくしいひと』のチャリティー上映会を企画されている方でした。催すに当たり、事前に現地の被災地をご自身の目で見て回っておきたいということで、私たち夢屋スタッフもできるだけ被災現場を車でご案内し、地域の現状などをわかる範囲でお話ししました。メンバーとも交流をして下さり、たいへん有意義な時が持てました。このような支援の一環として来られた方との交流は「震災」を通して人と人の輪が着実に広がっていることですし、これからもそういった関係は大事にしていかねばならないと実感した出来事でした。
では4月から5月までの行事(予定を含む)をご紹介させていただきたいと思います。

4/3 夢屋の新年度がスタートしました。
4/7北海道大学の学生の方が簡易宿泊所『野菜ty(のなてぃー)』に御宿泊。
4/13パンの配達が終わってから阿蘇神社や仲町通りの花見をメンバー皆でしました。
4/22特別講演 姜尚中さん『阿蘇への提言』~震災後の阿蘇地区をどうたてなおすか~(阿蘇市農村環境改善センター)に」参加。
5/10阿蘇市人権・同和教育推進協議会に竹原が出席。 
5/31竹下舞さんの誕生日です。

熊本地震はその被害範囲が広いことから、「ムラ型震災」と「マチ型震災」の複合体であり、報道や支援が「マチ型」へ偏っていると危惧される大学の先生もいらっしゃるようです。阿蘇の中にも厳密には、この「ムラ」と「マチ」は混在しているでしょうし、細かく具体的に何がその地域や場所にとっての「復興」につながるのかを見定め、有効な手段を投じていく視点がこれからはより必要なのではとも思います。夢屋も皆で力を合わせ、まずは日々の活動をこれまで同様、地道にやっていこうと考えております。お客様や出会う方お一人お一人の思いを大事にしながら、皆様からお力をいただきつつ、23年目もメンバー、スタッフとともに歩んでいこうと思っておりますので、どうかよろしくお願いいたします。

『素敵な方々との出会い』     中島 地利世

また新年度が始まり、最初のお便りは3月までのお話を書かせて頂きます。
忘れもしない、出来れば思い出したくもない大地震の日から1年を目前(この文を書いた当時)にして、「また来るのでは…」「準備は万端かな?」などと不安で眠れない日が続く人もいらっしゃるかと思います。体調を崩されない事を願うばかりです。
私もその1人で、気づくとそのまま夜が明けるという日もあります。(苦笑)
1年たった今でも県外のボランティアの方々が、服などを送り続けて下さる方もいます。
そして、絶対に忘れてはいけないのが、命の恩人と言っても過言ではない方との出会い。
昨年の夏号(特集号)でも書きましたが、完全に食料や生活必需品が不足してしまった時、宮本さんが、自分も負傷していながらも「支援品を戴いたから」と届けてくださいました。
その支援品を大量に【夢屋】に届けて下さった方々のうちのお一人とお会いできました。
「社会福祉法人さくらんぼの会」の大野さんです。その方がついに訪ねて来て下さいました。
紹介されて「とにかく感謝の気持ちを伝えないと…」と思い、お礼を言うと「お役に立てて良かった!ありがとうございます」と逆に、満面の笑顔でお礼を言われました。
すごくお話しやすい方で、地震の時の話や私の【夢屋】との出会いを聞いて下さいました。
つらかった話の時は眉間に思いっきりシワよせて、楽しい話の時は満面の笑顔で一緒に喜んで下さって「なんて感情豊かで素敵な方なんだろう…」と、思いました。
帰り際「頑張って下さいね」と、また満面の笑顔で手を振って帰って行かれました。
久し振りに「もう少し、お喋りしたかったな」と思う位、楽しい出会いでした。
そして、2月にも素敵な出会いを体験させて頂きました。
「大阪女学院」と「熊本学園大」の学生の皆さんが見学に来て下さって、吉村先生とも久し振りにお会い出来て嬉しかったです。
それだけでも有難いのですが、なんと次の日、阿蘇YMCAでの交流会にまでご招待して下さいました。
たくさんの鍋料理やたこ焼き←(これが最高においしかったです)、飲み物までご用意して頂き、皆さん、とても優しくお話して下さり、楽しくお喋りしました。
後半になると、皆さんで歌やダンスまで披露して下さいました。
その中で、くまモンのかぶり物をされていた先生がすごく可愛かったです。
とても幸せで有意義なお時間を過ごさせて頂きました。
最後に、4月24日が過ぎるといよいよ【夢屋】入所15年目に突入します。
自分でも、ここまで通い続ける事ができた事に驚いています。(笑)これも全て、精神的に支えてくれている【夢屋】の皆と癒しのお言葉を下さるお客様のおかげです。
これからも、感謝の気持ちを忘れず元気で頑張っていきたいと思います。

山田小学校から2/27と3/6に交流学習に来てくれた感想を載せさせていただきます。

1年
●ぼくは、まるいパンをつくりました。パンをつくるのはとてもたのしかったです。
●パンづくり、とてもたのしかったです。うちのおとうとが「おにいちゃんのパンおいしい、さいこう!」とばくばくたべました。またらい年もきます。ありがたとうございました。
3、4年生
●小麦こには、はく力こや中力こ、強力こがあってつくる食べ物がそれぞれにちがうということを学習しました。
●ぼくは出会いを大切にすることや差別をしないことを考えて生きていこうと思いました。
●わたしは今日パンをつくって楽しかったし、パンが好きなので、またお母さんや家の人とパン作りをしたいです。
●また行けるときがあったら家族で行きます。出会いを大切にしてすごしていきます。
●パンは生きているということを学習させてもらいました。ありがとうございました。
●パンには強力粉を使った方がふくらんでおいしくなるということを初めて知りました。
●学習したことは出会いとパン作りの楽しさです。夢屋に行ってよかったです。
●初めてパンをつくったから楽しかったです。おいそがしい中、ありがとうございました。
6年
●「夢屋」を開くために教師をやめてまで行動したみやもっちゃんのことをすごいと思います。みやもっちゃんのように人のことを考えることができる人に憧れます。ぼくもみやもっちゃんのようになれるようにがんばりたいです。
●みんなで楽しくパンをつくれたのと楽しく話ができたのがよかったです。
●ぼくはひさしぶりに行ったけど去年みたいに50グラムにするのがちょっとへたになっていました。でもどんな形にするかはパッと思いつけ、やきあがりも去年より上手にできました。
●一番心に残ったのはお笑いです。みんなが明るく楽しそうなパン屋だなと思いました。歌を自分たちでつくって、しかも本を見ずに歌っていたのですごいと思いました。去年来た時より全部が進化していたのですごいと思いました。
●宮本さんとゆうこさんのマンザイがとてもおもしろかったです。ちとせさんの話を聞いて差別をうけて苦しんでいる人がいることを初めて知りました。
●みさきさんの作った曲がとてもよく、歌も上手でした。
●ちとせさんのお話を聞いて、つらいことがあれば、楽しいこともおなじくらいあると思いました。つらいことがあったからこそ、今、楽しいことがあるんだなあと思いました。
●私はちとせさんのお話が心に残りました。差別をされたりして、仕事ができなかったり、他人と話すことにとまどったり大変だったと思うけど、「夢屋」に行ったことで、いろいろなことを学べたのは良いことだと思います。
●パン作りの様子を歌詞にして歌を三番までつくったみさきさんはすごいと思いました。
皆さん、すばらしい感想を本当にありがとうございました。これを励みにまたやっていきます。

ウルマとの散歩
                              下村津代
その日の天気にもよりますが、一日に一度はできるだけウルマと一緒に散歩にでるようにしています。まずは私自身が着替えたあと、ウルマの排泄をすませ、ハーネスを着けてから出発です。私もですが、ウルマも尻尾をふってとても楽しみな時間です。
いつもの慣れた道を歩いていると、季節折々の草花の香りや人や車の行き来する気配などの変化がわかり、目には見えませんが想像することでその情景がはっきりと浮かんでくるような気がします。すれ違う人の足音が近づくと、できるだけこちらから挨拶するようにしています。ときどき足音がせず、突然近くに来る人もいますが、そんなときはウルマがさっと振り向いたりして教えてくれます。散歩をしていてとても助かるのは固定した音です。信号の音はもちろ、自動販売機のジーンという電気音やシャッターが風に揺れる音など歩いていてだいたい決まった間隔で聞こえてくる聞き覚えのある音は、自分が大体どのあたりにいるかとか、今どんな様子かなどを確かめるのにとても便利な音です。また、あの道は今工事中だとかいう事前に人から聞いていた情報も大事で、そういったいろいろなものを自分の感覚と合わせながら歩いています。特に地震後は建物が取り壊されている話などを聞き、散歩しながらもああここの家もなくなったんだなあとか想像し、胸を痛めています。またウルマも今年10歳になり、そろそろ引退を考えなければいけない時を迎え、福岡の盲導犬訓練センターの方とも相談しているところです。早めに引退させ、私自身も次の盲導犬との新しい一歩を始めるか、できるだけ長くウルマと暮らし、私も一緒に盲導犬との生活にピリオドを打つのか、私自身の年齢やこれからのことも考え、頭を悩ましているところです。

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