「共」に「生」きる。 in 阿蘇

2008・冬号~ミヤモっちゃんの近頃読んだ、この一冊~

『千年、働いてきました~老舗企業大国ニッポン』野村 進著(角川oneテーマ21)
数日前、夢屋の向いの築200年近い蔵が、クレーン車で持ち上げられ、数十メートル先へ移
築されるのを見ました。
まさしく江戸、明治、大正、昭和、平成を生き抜いてきた建築物が、時代を超え、現代にタイムスリップするのを目の当たりにするようで、手際の良さも鮮やかなものでした。土台から切
断された一本一本の柱には、既に真新しいほぞがつくられていて、クレーンの絶妙な動きとともに、大工さんの木槌が振るわれながら、まだ木肌の香りのしそうな真新しいほぞ穴へ、じわりじわりと入っていきます。
まさしく、最先端の道具と長年培ってきた匠の技がマッチした瞬間を見たのでした。こんなとき、ついついうっとり見とれてしまうのはなぜなのか。そんなことを考えているうちに最近読んだ一冊の本を思い浮かべました。
『千年、働いてきました』主語は何? もちろん「私」でも、「夢屋」でもありません。私自身、怠けながらにたかだか25年、「夢屋」も14年にすぎません。これは、大阪の「金剛組」という建築会社で、西暦593年、難波の四天王寺を完成させたのが仕事始めだったということです。創業、実に1400年。間違いなく現存する「世界最古の会社」であり、「世界最長寿の企業」らしいです。その他に出るわ出るわ、創業百年以上の会社を調べてみると、日本には何と、十万以上もあるということです。
世界的に見ても、この数は尋常でないらしく、この理由を探るところからこの本は始まります。『お!、この不況時になにやら希望の持てる話!』ページをめくるごとに世知辛い「今」を生き抜くための先人の知恵がありはしないかと、ついつい前のめりになっている自分に気づきます。
そこで見えてきたのが「商人のアジア」に対し、日本は「職人のアジア」。すなわち腕に技を持った人を尊ぶ傾向が強いというものです。熊本ではなじみ深い加藤清正しかり、築城と治水に秀でてることが城主の条件であり、身分の違いに関係なく、体を動かし汗水流して働くことが当たり前という思想があったというものです。
つまり、長年生き延びてきた企業は、時代の中で柔軟に対応しながらその技術を進化させつつ、たとえばロウソクづくりをやっていた会社が木ロウ加工の技を、コピー機のトナーの添加剤としていかしたり、京都で着物や器に金箔を施していた店が、ケータイの電磁波を防ぐ塗装をやったりと、枚挙にいとまがないのです。
もちろん、時代の激流の中、生き残れなかった企業も少なくありません。ただ作者は、もう一つの長寿の理由に、日本の場合、血族優先の経営ではなくて、不適格な二代目、三代目に継がせるよりは、外から有能な人材を連れてくるという、「血縁」よりも「会社」や「組織」優先の考えが強かったことも挙げています。
良し悪しは別として、なるほどと頷ける一冊なのです。
さあて、ならば体もガタが来始めたことだし「夢屋」もそろそろ、やる気のある人材をどこからか発掘してこようか!!(笑)と思いきや、その根底には、実直なまでの研究心と誠実な経営、そして何よりもお客様のことを第一に考えながらの地道な努力があったればこそということも詳述されています。
なるほど。ムムム……。どの道もそうそう甘くはないものだ!!
唐突ですが、最後になりましたが、皆様にはこの一年、たいへんお世話になりました。これからも何とぞ「夢屋」をよろしくお願いします。そしてどうか、よいお年をお迎えください。

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