「共」に「生」きる。 in 阿蘇

2014「夢屋だより」秋(92)号からいくつかの文章をご紹介します。

朝夕、少し冷えるようになりました。夢屋より秋のご挨拶をさせていただきます。

作業所「夢屋」代表 宮本誠一

いよいよ午年にふさわしく「天高く馬肥ゆる秋」と言いたいところですが、今年の夏は天候不順で、広島を始めいくつかの地域で豪雨や災害をもたらし、日照不足により農作物にも大きな影響が出ているようです。皆様、お変わりありませんでしょうか。さてそんな中、埼玉県から心を痛む事件が耳に入って来ました。一つは7月に全盲の男性がいつものように盲導犬を連れ職場へ行ったところ犬のお尻に何か赤いものがついているのを周囲が気付き、服をめくると腰から臀部が血だらけで、フォークのような刺し傷があったというものです。しかも盲導犬は何があっても攻撃したり吠えない訓練をされているため、じっと耐えていたとのこと(これに関しては、夢屋のメンバーである視覚障がい者、下村津代さんの率直な感想を次に載せております)。もう一つは、今月初め、同じく全盲の女子生徒が歩いている際、後ろから知的障がい者の男性に膝を蹴られ転倒した事件です。男性は直前に白杖に接触し転び、その腹いせにやったようです。警察によれば刑事責任を問えるかどうかは分からない(これを書いた9/15の時点で)とのこと。両者とも詳しい状況や事実も知らぬ立場で簡単に断言することは避けたいのですが、敢えて印象のようなものを申し上げさせていただけるなら、どちらとも何らかの形で社会的に弱者に置かれている人が、より自分以上に抵抗できない人へ感情的にせよ、計画的にせよ、怨恨のようなものを吐き出している構図が見えるような気がします。やはりここで私たちは冷静に事件を受け止める必要があるのではないでしょうか。加害と被害の当事者にばかり目を向けるのでなく、たとえ回り道であってもその周囲である社会全体での盲導犬への理解が果たしてどのくらい進んでいたのかとか、身体や知的、精神障がいの方たちに対して日頃からどのくらいの関係がつくれているのかを一人一人が顧みることで、お互いがストレスの少ない環境を模索し共生への道を少しずつでも積み上げていくことが大事ではないかと思った次第です。それでは9月と10月の行事のご報告(予定も含む)をさせていただきます。

9/6 第18回、阿蘇市の『観月茶会』へ竹原幸範氏(茶会の創始者)を介護して参加。

9/9 阿蘇くんわの里から支援員・開拓員さんが就労支援事業のご相談のため来訪。

9/17 宮地小から特別支援学級の交流学習の打ち合わせのため来訪。

9/27 北九州からサッカー観戦のため『野菜ty』にご宿泊。

10/13 メンバーの小嶋康揮さんが21歳の誕生日。(お祝いは10日に行う) 

10/6 宮地小の特別支援学級の児童(4名)とパン作りを通じての交流学習。

10/22阿蘇市読書感想文コンクール最終審査会に宮本出席。(宮本自身はは6回目)

広島の豪雨災害後、阿蘇市や有志の皆さんが物資やボランティア派遣など様々な支援に取り組んでいるとのこと。2年前の九州北部豪雨災害時の全国各地からの支援の恩返しの意味もあるそうですが、懸命に活動されている方々へ心より敬意を表したいと思います。また伝え聞いた所によれば佐藤市長がTVインタビューで、非常時、長たるものは人命を守る意味からも空振りを恐れず、しかるべき行動に移る勇気も時としては必要であるとおっしゃったそうです。けだし貴重な一言だろうと思います

 

      まだまだ盲導犬の理解が広まっていないことを実感。

下村 津代

事件が新聞などで報道されるやすぐに音声メールで福岡の「盲導犬友の会」から悲しみや憤りの言葉と一緒に詳細を知らせる記述が送られてきました。私も最初はとにかくショックで打ちひしがれました。そしてやがて落ち着き、事件のあらましを振り返るにつれ抑え難い怒りがこみ上げてきました。

まず私たちは、目が見えないとはいえ(むしろ、だからこそ)、人や物が接近してくることには日頃から敏感です。そんな感覚にわからないようこのようなことを行うにはよほど慎重に近づき、計画的にやったとしか思えませんし、犯人の狡猾さに恐怖のようなものさえ感じました。

また私がそれ以上に心が沈んだのは、その後のマスコミ(特にテレビやネット)での、明らかに盲導犬や私たち利用者との暮らしの実態の無理解からくる心無い意見です。例えば、盲導犬を吠えないようにしているからこんなことが起きるとか、目が見えないのに外出するからいけない、盲導犬は視覚障がい者の犠牲になったとまで発言する人が出てくる始末。それらに対して「全日本盲導犬使用者の会」の方々はいち早く国会などへ意見書を提出しする行動へと移っているようですが、私も、今更ながらまだまだこの国では盲導犬の理解が進んでいないのだあと、落胆しきっています。さらにがっかりしたのは、警察が盲導犬を「器物」と捉え、今回の事件を『器物損壊罪』の容疑で捜査を進めているということです。私たちの命を預かり、体の一部とも言える生命ある盲導犬が1つの『物』として扱われてしまうことに、やり場のない思いを感じています。捜査や法律上の都合もあるのでしょうが、どうか何か心の通った別の「表現」を考えていただきたいと切に願っている次第です。

 

                                                              ‡『熊本ネコ歩き』=^_^=

☆中島 地利世☆

7月に「熊本県立美術館」で、あの有名動物カメラマンとして活躍されている岩合光昭さんの「写真展 トーク&サイン会」が、午前と午後に2回に分けて開かれました。

「岩合さんみたいな男性と結婚したい!」とまで熱望している妹と母の付き合いで、午前中の方に私も一緒に見に行ってきました。

トーク会の方は残念ながら満員だったのですが、サイン会は当日の写真集を購入した先着100名様なので、急いで会場前に着いたらまだ開館時間も早かったのに、すでに並んでいるお客さんが5~6人位いました。私達も一番後ろに並ぶと、後から後から一気に長蛇の列になりました。^^;

市内はやっぱり風が全くないので母の体調が心配でしたが、周囲の方達が座る場所を空けてくれて、親切に扇子であおいで下さる方もおられて、何とか時間まで待っていました。するとそこへ予想外の出来事が…イベント時間より早めに着いた岩合さんが、スタッフの制止を断り「皆さんこんな暑い中、恐縮です」と、わざわざ玄関前に労いと感謝のお声をかけに来て下さいました。

おかげで、並んでいる人みんな元気復活❤ものすごい歓声があちこちから…(_😉

時間になって会場内に入ると、販売受付もすでに列があり、1階の入場受付を済ませると、妹は一目散に写真集の販売場所に走って行きました。完売が心配されていた写真集も何とか無事に購入できたようで、サイン会の参加券を母と自分の分2枚もらう事が出来ました。

ホッと一安心した後、まずは展示されている作品を見て行こうと2階に上がったら、そこでも入場受付をしないといけないらしくて、一度バックの底にしまいこんでしまった入場券がなかなか見つからず、焦った私は「どこやったと~!?」とブツブツ言っていると、近くの男性がニコニコ笑っていて、よくみると衣装変えした岩合さんでした。ビックリしたのとブツブツ言って申し訳ない気持ちで、逆に落ち着いて探せました。(笑)

展示会場では、インタビューに答えながら歩いて行く岩合さんと、一緒に映りたくて近くをウロウロしている人や、照れくさくて逃げ回っている人がいて、どんな感じに放送されるのか観てみたかったので、放送日時を近くのスタッフに聞くと、TKUの「英太郎のかたらんね」という番組だそうで生放送という事がわかり、観る事ができませんでした。後で観ていた家族に聞くと、私達がハッキリ映っていたらしく、ますます観たくてしょうがなくなりました。(誰か録画してないですか~?)()

でも、こんな近くで撮影現場を見られると思わなかったので、「トーク会に参加してるようなもんやね」「これ以上、望んだら罰あたるよね」と話しながらいよいよメインのイベントのサイン会の時に、母が「今度は阿蘇にも来て下さい!」と言ったら、笑顔で「喜んで♪」と言って下さったらしいです。付き合いのつもりがすごく楽しかったので、もし本当に阿蘇に来て下さったら「また、絶対に行こうね」と、今から皆で楽しみにしています。

 

コウキ&マイ日記    by  チー 

8月27日・水曜日(晴)

今日のコウキ君は、朝お母さんに送ってもらって来た時から笑顔もよく出て、お母さんが「バイバ~イっ♪」と元気よく挨拶されると、コウキ君も思いっきり手を振りかえしていたので、お母さんも気持ち良くお仕事に行く事がでたと思います。マイちゃんは捻挫をしてしまい、病院に行く為お休みする事になってしまいました。しばらく寂しそうに項垂れていたコウキ君も、お昼ご飯近くになると何とか元気が復活☆単純にお腹すいていただけか?大好きなカレーをあっという間に平らげてしまいました。 

7月23日・水曜日(くもり)

今日は、コウキ君よりマイちゃんが先に来て、[夢屋]に入ると寂しそう?に「おらんもんね~」と、コウキくんがいつも座っている場所を指さしたので、「ちょうど今こらしたよ」と言うと「フッ」と可愛らしい笑顔を見せてくれました。コウキ君も、先にマイちゃんが来ているとわかったとたん、カッコイイとこをみせようとハリキリ?、行儀よく靴を脱いでチーさんにわたしてはチラッとマイちゃんの方を意識していました。()

その後、ミヤさんが少し留守にした時に、2人の様子がちょっと心配でしたが、とても調子よく座っていてくれました。マイちゃんは、また妹さんや弟さんのお話をたくさんしてくれて、「今度、家に帰ってくるって♪」とすごく嬉しそうでした。 

7月16日・水曜日(晴)

今日は、久し振りにマイちゃんも来てくれて、みんなが揃ったのでとても賑やかな【夢屋】になりました。マイちゃんは、しばらく会わなかった分、話したい事がたくさんあったみたいで、「マイちゃんはね~…」と切りだし、最近の出来事?や大好きな家族のお話を聞かせてくれました。その度にコウキ君が「ん~!」「ん~っ!」と唸るので、マイちゃんも「フッ」と笑っていました。 

87日、阿蘇市学校人権同和教育部会課題別研修会・「共生」の教育で夢屋のスタッフとメンバーが講師で招かれた際の参加者の方々の感想の一部をご紹介させて頂きます。こちらも日頃の活動を振り返る良い機会になりました。ありがとうございました。 

●宮本さんのお話を聞いて、いろいろなことを考えました。特に「差別」のことと関連付けて話をされたときは、私も、結局は根底にあるのは、差別なんだなあと思いました。また「共生」を考えるときに、お互いに「違いを認め合える関係」として結びつくことが必要……と言われたとき、私が今、過ごしている教室が頭の中に浮かんできました。そしてミサキさんとチトセさんの発表からは、お二人のこれまでのしっかりとした努力やメンバーへの思いが伝わって来ました。今回、この研修で特に心に残ったことは、宮本さんが夢屋さんのことをとても大切に思っていらっしゃることです。夢屋さんのお話をされるとき、とても笑顔で楽しそうに話をされたのが本当に印象的でした。これからもまた、学校に戻って子どもたちと過ごしていく中で、一人一人が安心して過ごせる場づくりに取り組んでいきたいと思います。今日はお話をしていただき、本当にありがとうございました。 

●今日は、ありがとうございました。様々なお話を聞いて、何のことから感想をお伝えしたらよいのか、まだまだ整理することができませんが、一番頭にうかんできたのは家族のことです。「先のことを考えていたのか。現実には難しい中で生きていかなければならない」ということや「一つの円の中でお互いが分かり合えていたのか」今日、心に残ったことでいろいろな面から自分を振り返っていました。宮本さんや竹原さんと美早さんや地利世さん、康揮さんのやりとりや様子を見ていて、『お互いが分かり合える』ということは楽しいんだなと感じました。「家族」と言う形態をもっていても分かり合える、何もしなくても分かり合えるとは限らない。逆に、家族だからこそ見ようとしていなかったり、分かったつもりで過ごしていたのではないかと思いました。具体的なことを書かずとてもわかりにくい文面になっていますが、たくさんのことを考えることができた時間でした。ありがとうございました。 

●「夢屋」さん、宮本さんのお話はこれまで数回、聞く機会がありましたが、今日はまた、そこで実際に働いておられるチトセさんやミサキさんの発表やつづりを聞くことができて、日常をどんなふうに過ごされているのかがよくわかりました。また「綴り」を通して、一人一人が表現することを改めて大切なことにしていきたいと思いました。パンづくり、つづりを通して、人とつながること、コミュニケーションを大切にされていることが理解できました。ありがとうございました。 

●阿蘇市の課題別研修を何度も受けてきました(参加してきました)が、『共生』の教育に参加したのは初めてです。夢屋さんのことを知っているようで知らなかったんだ……今日、知ることができて本当にから増々楽しみになりました。自分自身、文章を書くのが高校生くらいからとても苦手になり、きっと正直に生きていない。宮本さんの言葉をかりると自分自身を受け入れられていないのだなあ……と思いました。まだまだ「共生」についてわからないことも多く、自分に何ができるかもわかりませんが。何か活動していけば、一緒に何かできれば……と感じました。ミサキさんの文章の中でチョコベベやメロンパンが出て来て、しばらく食べていないなあと思いました。まとまりのない感想になってしまいましたが、今日は本当に参加できてよかったです。ありがとうございました。 

●私は本年度、初めて阿蘇市へ転勤してきて今回の研修で初めて夢屋さんのことを知りました。20年間の歩みをお聞きし、宮本さんの行動力に感動しました。私は教育現場で出会った子どもたちが将来どのような生き方をしていくのか、今まで深く掘り下げて考えてこなかったことに気付かされました。小学校から中学校、中学校から高校……までは考えていても、その先は……。前任校でかかわりのあった知的障がいの子どもさんのおばあちゃんが「○○が中学校卒業したら……」とつぶやいておられたことを思い出しました。『ターニングポイント』の最後の方に書かれていた「最終的には『自分自身を受け入れることのできる(他人との関係も含め)自分』という言葉に胸打たれました。あっ、私は自分自身を受け入れられていない……と思いました。人と比べて自分をマイナスに受け取ってしまう…そこに差別があると思います。本日はありがとうございました。 

●インクルーシブ教育で誰も排除しない教育を目指し、現実問題と向き合いながらも、この夢屋を運営されてことに敬意を表したいと思います。本当は質問で苦労より「喜び」をお聞きしたかったのですが、夢屋さんのことに関わる方とお会いするのが今回初めてで、ちょっとアウェイ感があり、挙手してお尋ねする勇気がありませんでした。しかし、通所されている方を見つめられる温かな眼差しやレポート、お言葉の端々にそれらにつながる温かな思いを感じ、私たちが子どもたちと関わる視点と根本は同じじゃないかなと感じ入ったところです。平成2年に阿蘇で教員生活をスタートした自分にとって、宮本さんの宮地小でのお仕事ぶり、そして夢屋開設、文学賞受賞……とずっと勝手ながら応援、注目し、自分と重ねさせていただいておりました。私にも目の前の子どもたちを伸ばしたいという夢があります。その夢を実現していきたいなという力を改めていただいた気がします。今日はありがとうございました。

 

コメントはまだありません

TrackBack URL

Leave a comment